脂質異常症
脂質異常症とは
脂質異常症とは、血液中の中性脂肪やコレステロールなどの脂質が異常値となる状態のことをいいます。
脂質異常症は、初期の段階では自覚症状がほとんどない病気です。したがって健康診断などで、血清脂質(血液中の中性脂肪やコレステロールの数値)に注目する必要があります。
自分の健康を守り、健康寿命を伸ばし、そして、家族の幸せを守るため。健康診断で脂質異常症の指摘があれば早めに相談することが大切です。
脂質異常症の症状
普通は無症状です。家族性(遺伝性)の場合は、脂肪が皮膚や腱(けん)にたまって、黄色腫と呼ばれるこぶを形成することがあります。
脂質異常症の原因
原発性:遺伝によるもの(遺伝性)
原発性は、LDLコレステロールや中性脂肪を過剰に産生したり、これらの物質を除去できなくなったりする遺伝子変異が関与しています。原発性の原因は、遺伝する傾向があるため、家系内で多発します。
続発性
生活習慣やその他の原因によるもの。脂質異常症は多くの場合、続発性の原因によるものです。よくみられるその他の続発性の原因には以下のものがあります。
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糖尿病
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多量の飲酒
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慢性腎臓病
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甲状腺機能低下症
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原発性胆汁性肝硬変
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薬剤性:経口エストロゲン、経口避妊薬、ステロイド系など
脂質異常症の診断基準
脂質異常症とは、血液中の中性脂肪やコレステロールなどの脂質が異常値となる状態のことをいいます。以下の数値が脂質異常症の判断基準になります。
LDLコレステロール (LDL-C) | 140mg/dL以上 高LDLコレステロール血症 120~139mg/dL 境界域高LDLコレステロール血症(注1) |
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HDLコレステロール (HDL-C) | 40mg/dL未満 低HDLコレステロール血症 |
トリグリセライド (TG) | 50mg/dL以上 高トリグリセライド血症 |
(注1)スクリーニングで境界域高LDL-C血症を示した場合は、高リスク病態がないか検討し、治療の必要性を考慮します。
※ 上記の脂質管理目標値はあくまでも到達努力目標となります。
※ LDL-Cは20~30%の低下を目標とすることも考慮します。
脂質異常症の治療目的
高脂血症の治療の主目的は動脈硬化の予防、さらに脳・心血管疾患の予防(脳梗塞、脳出血、狭心症、心筋梗塞、下肢閉塞性動脈硬化症)です。脂質管理と同時に他の動脈硬化危険因子の治療と管理(高血圧症の治療、糖尿病の治療、禁煙)も併せて重要です。
脂質異常症の治療
脂質異常症は、以下のような治療方法があります。
- 生活習慣の改善
- 食事の見直し
- 運動
- 脂質を下げる薬の内服
脂質異常症の治療
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脂質異常症をきたしうる原疾患があればその治療を行います。
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個々の患者さまのリスクを評価して治療方針を決定します。
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まず生活習慣の改善が基本です。
生活習慣の改善
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禁煙し、受動喫煙を回避しましょう。
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過食を抑え、標準体重を維持しましょう。
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肉の脂身、乳製品、卵黄の摂取を抑え、魚類、大豆製品の摂取を増やしましょう。
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野菜、果物、未精製穀類、海藻の摂取を増やしましょう。
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食塩を多く含む食品の摂取を控えましょう(6g/日未満)。
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アルコールの過剰摂取を控えましょう(25g/日以下))。
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有酸素運動を毎日30分以上行いましょう。
食事療法(脂質異常症を改善する食事 )
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高LDL-C血症
コレステロールと飽和脂肪酸を多く含む肉の脂身、内臓、皮、乳製品、卵黄および、トランス脂肪酸を含む菓子類、加工食品の摂取を抑えます。 食物繊維と植物ステロールを含む未精製穀類、大豆製品、海藻、野菜類の摂取を増やします。
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高TG血症
糖質を多く含む菓子類、飲料、穀類の摂取を減らす。 アルコールの摂取を控える。 n-3系多価不飽和脂肪酸を多く含む魚類の摂取を増やします。
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低HDL-C血症
トランス脂肪酸の摂取を控えます。n-6系多価不飽和脂肪酸の摂取を減らすために植物油の過剰摂取を控えます。
運動療法
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運動療法の効果
・体力を維持もしくは増加させます。
・動脈硬化性疾患やメタボリックシンドロームの予防・治療効果があります。
・HDL-Cを増やし、TGを減らします。
・インスリン感受性を高めます。
・ストレスを解消し、骨密度や脳機能を高め、QOLを改善します。 -
運動療法の実際
中等度強度の有酸素運動を毎日30分以上続けることが良いです。
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運動種目
ウォーキング、水泳、サイクリング、スロージョギング(歩くような速さのジョギング)など、大きな筋肉をダイナミックに動かす身体活動がお勧めです。
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運動時間、頻度
1日30分以上の運動を毎日続けることが望ましいです(少なくとも週3日は実施できると効果的です)。また、1日の中で短時間の運動を数回に分け、「合計30分以上」でも問題ありません。
狭心症や心筋梗塞などの心血管合併症をお持ちの方は、担当の医師に運動療法の実施が問題ないかどうかをあらかじめ確認するようにしましょう。
薬物療法
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生活習慣の改善で脂質管理が不十分な場合には、薬物療法を考慮する。
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糖尿病、慢性腎臓病、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患では早期の薬物療法を考慮する。
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TGが500mg/dL以上の場合には、急性膵炎の発症リスクが高いため、食事指導とともに薬物治療を開始する。
カテゴリー分類に基づいて脂質の管理目標値
治療方針の原則 | 脂質異常症の管理目標値 | ||
---|---|---|---|
LDL-C | HDL-C | TG | |
[一次予防] まず生活習慣の改善を行う。 |
カテゴリーIII <120 |
>=40 | <150 |
[二次予防] 生活習慣の改善とともに薬物療法を考慮する。 |
<100 | >=40 | <150 |
留意すべき脂質異常症
原発性高脂血症
特に家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体は約500人に1人と高頻度であり、冠動脈疾患の発症頻度がきわめて高いことから、その診断は非常に重要です。
続発性(二次性)高脂血症
甲状腺機能低下症による高LDL-C血症を見逃さないよう注意が必要です。
【リスク評価】個々の患者さまの背景(冠動脈疾患の既往、高リスク病態、性別、年齢、危険因子の数と程度)によりコレステロールの管理目標値は大きく異なります。
家族性高コレステロール血症(FH)
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常染色体優性遺伝疾患であり、早発性冠動脈疾患発症リスクが極めて高い。
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早期診断・治療が重要である。
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治療には、スタチンを中心に併用療法も考慮し、LDL-Cの管理目標値を100mg/dL未満もしくは治療前の50%未満にする。
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診断には家族歴の聴取が重要である。 家族性高コレステロール血症診断基準(成人) 2項目以上が当てはまる場合、FHと診断する。